藤沢市議会向けの請願・陳情は全否決!
今さら言うまでもないことですが、今年の夏以降にわかにモスク建設に対する反対運動が勃発しました。
場所は、藤沢市宮原3344番地1、元内野種苗店の跡地です。
すでに更地となっており、いつでも着工可能であるようでして、約300坪の敷地に、鉄筋2階建てのモスクが2027年度を目ざして建設されることになります。
10月に入って、オンライン署名サイトにおける「モスク建設計画、断固阻止!」のキャンペーンが始まると、日に日に署名数が増加し、最終的には3万3千人が賛同しました。
また藤沢駅や湘南台駅などでの集会やビラ撒きが展開され、市議会への働きかけも頻繁に起こるようになりました。

12月1日からスタートした藤沢市議会に対して、モスク建設に関連した請願および陳情が何と40件以上提出されたことからして、この問題に関する住民の関心の高さが分かります。
中には建設中止という激しい論調もありますが、他方、交通渋滞や騒音、ならびに住民説明会の開催、あるいは土葬禁止条例の制定というような建設そのもの以外の対策を求める陳情も散見されます。
ところで内容はともあれ、モスク問題に関する市議会の対応は、全部否決という判断を下しました。
確かに特定の宗教やその活動について、他の宗教団体やその施設・集荷所より不利に扱うことがあってはなりません。
もちろん、十分な根拠がないまま、特定の宗教や民族集団を危険視したり、嫌がらせや暴力的な行為をすることはご法度です。
ただここで言えるのは、住民サイドの不安や懸念に対して、行政や議会が正面から向き合おうとしないことが、果たして妥当なのでしょうか?

宗教法人「ダル・ウッサラーム」とは、どんな団体?
今回のモスク建設に当たって申請された事業主体の1つに、宗教法人として「ダル・ウッサラーム」の名前が記されておりますが、これはどんな団体なのでしょう。
そもそも日本に所在するイスラム教団体は非常に分散的なのが特徴で、「信徒→教会→教団」というような、階層的な構造ではありません。
2010年に宗教法人格を取得した「ダル・ウッサラーム」は、本拠地を群馬県伊勢崎市としつつも、全国を統括する中央教団あるいは包括宗教法人という位置づけではなく、あくまで複数あるイスラム教関係法人の1つという位置づけです。
そして、基本的にタブリーグ運動(布教・信仰回復を重視する無党派の非政治的、伝統的な運動)に傾注し、一般信徒が中心となって、預言者ムハンマドの模範的な生活を実践・伝道する活動を行っているのが特徴的です。
ただ、こうした活動は日本社会に馴染みが薄いので、時折、奇異なこととして受け取られる面があったり、また集団での礼拝が地域環境を乱すという近隣住民からの苦情に繋がったりしている事実に、留意すべき点が多々あると思われます。

住民サイドからくる疑念、不平不満
従来、モスクが比較的穏やかに建設されてきた自治体の多くは、工業地帯であったり、すでに国際化が進んでいたエリアであったり、外国人労働者が多く暮らす地域でした。
ところが藤沢市宮原は、そんな特色ある場所ではなく、畑が広がり昔からの土地持ちが多く住むところです。
ましてや、今回の建設予定地は市街化調整区域内ですので、基本的に建設事業を行うには厳しい制約があります。
地域住民からすれば、「なぜこの場所で」、「なぜ調整区域での例外が認められるの」、「なぜ十分な説明がないままで話が進んでいくのか・・・」等々、そういった疑念や不平不満が高まっていくのはやむを得ないことでしょう。
行政側として、都市計画法に則って判断したのだから何も問題はないと言っておりますが、確かに適法とは言え、市街化調整区域における例外的な開発行為は、「次もあるのではないか」「近隣一帯に広がっていくのではないか」という不安を増幅させる要因にもなります。

土葬墓地というやっかいな懸念が・・・
前述した通り、市議会に出された陳情内容に、土葬禁止の条例を作るべしというものもありました。
2022年度中に日本で行われた葬送の内、99.97%が火葬、残り0.03%が土葬でした。
イスラム系信者にとって土葬は信仰に直結する問題で、「死後の復活」への信仰などを理由に土葬を希望する人が多いと聞きます。
現在、日本の「墓地埋葬法」では、土葬を禁じてはおりません。
ただし、市町村レベルで条例などを策定して、土葬行為を禁止させることは可能です。
今までも、例えば別府ムスリム協会が土葬墓地建設を目指した事例や、また茨城県桜川市においては、ムスリム(イスラム教の信者)に協力していた仏教寺院が墓地造成の許可を取り付けたものの住民説明を怠ったため、計画を知った住民から反対の声が上がり、結果として許可を取り下げざるを得なかった事例もあります。

現在では火葬が日本の文化として定着しているので、土葬に対する公衆衛生面での不安や懸念は多くの住民が共有することだと思えます。
ですから土葬を可能にする墓地建設問題が浮上しないよう、あらかじめ藤沢市でも他の自治体の事例を参考にして、土葬行為を禁止できるようなルール作りは必要ではないでしょうか。
元衆議院・参議院議員:水戸 まさし
