8月に出される年金・財政検証を巡って
財政検証とは何?
遡ること20年前、「100年安心な制度」と称し、年金改革が行われました。その時、持続的に年金財政が維持できるか否か、それを5年ごとに確認していこうとなったのです。これがいわゆる「財政検証」というもので、今年がその年に当たります。
そして、その前提として「年金の支給額は、今まで得ていた所得の50%を上回る水準を維持すること」とされています。したがって物価や賃金の上昇率をはじめ、出生率や平均寿命の見通しを勘案しながら、いくつかのシナリオが提示される予定です。
ざっと年金制度を解説すると
公的年金は20歳以上の国民が加入する1階部分の「国民年金」と、会社員・公務員等が加入する2階部分「厚生年金」であり、それ以上の3階部分は私的年金で構成されます。(下図参照)
公的年金は賦課方式と言って、「現役世代の年金保険料で、受給世代の年金額をまかなう方式」でして、その一方、私的年金は積立方式と言って、「将来受け取る年金を現役時代に積立ていく方式」です。
さらに公的年金には、第1号~第3号まで加入者によって分類されています。自営業・学生らは1号、会社員・公務員らは2号、そして専業主婦らは3号という形態です。
年金支給の仕組みについて
公的年金は原則、偶数月の15日に、前月と前々月の2か月分が支給されます。6月には4月分と5月分が支給されますが、その年金額は毎年、物価や賃金の伸び率から、少子化や長寿化に対応する率を差し引いて計算されます。
したがって、今年度の改定率は、賃金変動率+3.1%から、調整率-0.4%を差し引いて、2.7%の増額となりました。
年金制度の課題として
5年前の財政検証時には、1年間の出生者が80万人になるのは2028年と見込んでおりましたが、それよりも5年も前倒しとなりました。このことは将来的に保険料を納める現役世代が加速度的に減少することを意味します。この社会情勢を勘案して、下記の論点がにわかに浮上しております。
厚生年金による穴埋め
国民年金積立額は約11兆円、それに比べ厚生年金積立額は約198兆円ですので、厚生年金が国民年金を救済するという考え方です。ただ、それに対する厚生年金加入者側からの不平不満は当然出てきます。
年金の一元化に向けて
2015年に厚生年金と共済年金が統合されました。今度は公的年金全体を統合すべきという議論です。ただ、国民年金加入者につき、所得を正確に把握し、保険料も確実に徴収しなければ、厚生年金との格差が生じてきます。
第3号被保険者の廃止
第3号とは、前述した第2号に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、年収が130万円未満の人です。自ら保険料を払わなくとも、基礎年金は受給できることへの不公平感はあります。しかし、育児や介護、あるいは身体的な問題で働けない人たちへの配慮も必要です。
年金制度をどうすべきか
年金財政を維持するためには、保険料と年金支給額のバランスを図らねばなりません。自ずと保険料を支払う期間や、年金受給開始年齢の延長(つまり定年延長)が現実味を帯びてきます。
ただ国民が抱く年金制度へ思いは、「自分が払った保険料に見合う年金がもらえないのでは」という不信感です。成功例として有名なスウェーデンでは①所得比例方式に一元化、②最低保障年金の創設、③年金受給の透明化などを柱として、大改革が行われました。
わが国でも、老後の生活保障に関して、所得の再分配および、税と保険料のバランスにつき、抜本的に見直していくべきです。我が維新では、「ベーシック・インカム」という最低保障の支援制度を唱えていますので、是非参考にしてください。