~ 今やオーバーツーリズム対策は喫緊の課題 ~
「二重価格制」とオーバーツーリズムについて
現在、我が国は観光立国として大きな転換点に立っています。
政府は将来的に年間6,000万人の外国人観光客の受け入れを目標に掲げています。
その一方で、都市部や観光地では混雑、生活環境の悪化、公共インフラへの過度な負荷といった、いわゆるオーバーツーリズム問題が顕在化しています。
さらに、極端な円安が続く中で、日本人と外国人観光客の「支払い能力の差」は、もはや無視できない水準です。
外国人観光客にとっては“割安”である一方、日本人にとっては、日常的に利用してきた施設やサービスが「手の届きにくいもの」になりつつあります。
ここで重要なのが、日本人には生活者としての価格を、外国人観光客には観光消費としての価格を、それぞれ適正に設定する、「二重価格制」という考え方です。これは、決して外国人観光客を排除するための制度ではありません。むしろその逆で、「観光の持続可能性」を守るための仕組みです。
これからも日本に求められるのは「数の拡大」だけではなく、地域社会と観光が共存し、住民が誇りを持って暮らし続けられる環境を守ること。
そのための現実的かつ持続可能な選択肢として、「二重価格制」について、丁寧かつ正面から導入する時期に来ていると、私は考えます

二重価格制を導入している事例
すでに諸外国の有名な観光地や観光施設では、この二重価格制が導入され、10~20倍もの差をつけた価格で、外国人向けチケットが販売するケースも散見されます。
そうした場所では、観光資源の過剰な利用策や、観光収入を地元住民に還元していこうという意識が高まっており、二重価格の導入が当然の流れとなってきております。
① アンコールワット(カンボジア)では、カンボジア人は無料に対し、外国人観光客は37ドルの入場料。
② タージ・マハル(インド)では、インド人50ルピーに対し、外国人観光客は1100ルピーの入館料
③ マチュピチュ(ペルー)では、ペルー人64ドルに対して、外国人観光客は152ドル等
各々場所によっての価格差をつけております。
日本でも姫路城(姫路市)では、本年春以降、市民以外の入場料を2000円~3000円程度に値上げし、城の維持管理費を確保する方針ですが、今後全国的な展開につながっていくの否か、注視していかなければなりません。

国内のオーバーツーリズムの事例
昨今の訪問客の著しい増加により、交通機関の混雑や交通渋滞、騒音、ゴミ問題、観光資源の劣化、家賃や物価の高騰など、観光地や観光地に暮らす市民生活に過度なマイナス影響をもたらすようになりました。
これを表して「オーバーツーリズム」と呼びますが、「観光公害」と言い換えても良いでしょう。
例えば、石垣島や宮古島に見られる交通混雑や海の環境悪化の問題。富士吉田周辺に見られるゴミや自然破壊、あるいは遭難騒動。とりわけ歴史的な文化遺産が多くある京都においては、バスの混雑や食べ歩きやポイ捨てなどのマナー違反。
そして藤沢近くでも人気アニメの「スラムダンク」聖地巡礼問題、数えれば枚挙に暇がないほど、オーバーツーリズムが顕在化しております。
未だかつて、どの地域でもこれに対して正解だと言える対策は見つかっていないようですが、諸外国の事例にもあるように、方向性として観光税や入場料の徴収、予約制の導入など、観光客を抑える代わりに1人当たりの消費額を増やす傾向です。

二重価格制を導入するとしたら・・・
確かに、二重価格制に関する賛否があるのは事実です。
賛成意見としては、「自分も経験したことがある」とか、「円安」とか、前述した「オーバーツーリズム対策」とかです。
一方、反対意見としては、「差別・不平等」とか、「訪問客の減少」とかが指摘されています。
仮に、これを制度として導入しようとするならば、何よりその成果に対する意義付けを明確にしなければなりません。
まず、
② 中長期的に観光資源が守られていけるのかを思案
③ 観光客の体験する価値が損なわれないかを考慮する
ことが重要です。
もちろん、そのルールが明確で、誰にでも理解できるよう整える必要があります。
そのためには、
② 公式サイトでの事前説明や、
③ 例外規定(例えば、在留外国人や学生)の明確化等
も丁寧に周知すべきでしょう。
行政サイドによる条例化を進めるための必須要件
自治体が二重価格を設定するとしたら、そのターゲットとなるのは、
② 指定管理者に運営させている施設やサービスに限られます。
そして核心的な部分もある料金設定ですが、ここで最も慎重であるべきなのは「公平性」の観点です。
国籍で分けるということよりも、
① 居住の実態や、② 受益と負担との関係で分けたほうが理解を得やすいと思われます。
例えば、地域もしくは国内在住者は、日常的に税金や協力によって観光地を支えている。
そうでない観光客はそれ以外の面で支えてもらう、というように「合理的な配分」という考え方を採り入れるべきと考えます。
また、この取り組みに関しては、行政だけで進めるのではなく、広く住民サイドの視点も必要です。
② 集めたお金の使い道、そして
③ その結果による改善点などを、地域住民と協議しながら、
定期的に開示していくことが求められます。

民間の店舗やサービスに関してのアプローチ
観光地にあるのは、公的な施設やサービスばかりではありません。
むしろ、一般の店舗や飲食店の方が数多くあります。
ただし、行政がそれらの事業者に対し、強制的に二重価格制を押しつけたり、また価格差から生ずる利益を徴収することは出来ません。もし出来るとしたら、事業者の合意のもとで、地域のために拠出してもらうという方式でしょう。
あくまで参加は任意でありますが、その拠出の目的と使途を明確であり、参加した場合のメリットが認識出来れば、各事業者もそれなりに手を挙げてくれると思われます。
メリットとして考えられるのは、参加事業者が、
② 公的な認証マークや、
③ 行政からの広報支援などを付与されることでしょうか・・・、
それらによって集客や売上に繋がることが期待されます。
最後に、行政の役割は、「観光客や事業者からお金を集める」ということではなく、あくまで循環させることに意義を持たせなければなりません。
二重価格制について、それが地域を守り、観光を持続させるための公共的な仕組みとして設計できるか否か、要はここに掛かっていると言えます!
元衆議院・参議院議員:水戸 まさし