人口フレームの考え方
申し上げるまでもなく、鉄道計画は住宅政策と密接な関連性を持つものです。鉄道会社が線路を敷設し、駅を設置する際に最も重要視することは、何と言っても乗降客数でして、運行上のランニングコストのみならず、設置した投資コストを客が支払う運賃によって回収することは、会社側にとって至上命題であることは古今東西変わりありません。
そこで出てくるのが人口フレームという考え方。
人口フレームとは市の将来推計人口に対して、土地利用の状況や政策的判断などの影響を加味し、そこで想定された人口値のことです。
例えば、昨今脚光を浴びている「ソラトス」で名高い、相鉄「ゆめが丘駅」周辺は、区画整理する段階で人口フレームを5千人と設定しました。すなわち駅周辺において5千人規模の人口増を想定し、また誘致しながら、新たな街を形成することにしたのです。
2年前に公表された、藤沢市の将来人口推計ですが、2035年に約45万4千人に達するとしました。
そしてこれをピークに、藤沢市も人口減少が始まることになりますが、今後10年間で約1万人程度増えることになります。
とりわけ、想定される「いずみ野線沿線」エリアとなると、それは湘南台から遠藤地区一帯を含むことになりますので、今後、湘南台地区は約5千人、そして遠藤地区は約3千人、計8千人規模での人口増を見込んでおります。
したがって、鉄道を敷設するならば、この人口フレームを念頭に進めていかなければならないことは言を待たないでしょう。
都市計画決定と線引きの見直し
鶏か卵化は別としまして、大枠の人口フレームを設定した場合、人為的に人口増を見込みながら、それに至るまで様々な手段を講じていく必要があります。都市マスタープランをベースに都市計画決定をしていくことになりますが、具体的な手法として挙げられるのは「線引きの見直し」です。
この線引きとは「市街化区域」と「市街化調整区域」を区分することを意味し、「市街化区域」内はある程度、自由に建物や構造物を造ることが出来るエリア、「市街化調整区域」は建設に一定以上の規制を掛けるエリア、と2分されます。
これは街を形成する際に、無秩序な開発や自然破壊を招かないように歯止めをかけるための措置でして、だいたい5年ごとの都市計画基礎調査の結果を踏まえて調整されるのです。
まずは藤沢市の都市計画審議会にての議論を経て、次に神奈川県の都市計画審議会で最終判断がされあす。
この「線引き見直し」は5年に1度、国政調査の結果を踏まえて県内一斉で行われており、県の審議を経て昨年3月、藤沢市は北西部の一部エリアを「健康と文化の森地区」に指定し、この周辺約36ヘクタールが「市街化区域」に編入されました。
これから歩むべき道筋として
藤沢市として、ある意味最後の開拓エリアとなる北西部。
この「健康と文化の森地区」以外にも、「新産業の森地区」の2本立てとして進行していくでしょうが、とりわけ相鉄線の延伸を考えるならば、この前者である36ヘクタールを具体的かつ計画的に手を入れていかなければなりません。
既に、土地整理組合を立ち上げ、また昨年8月には産学公連携協議会もスタートしました。
当然、地元地権者や住民の方々の意見も織り交ぜながら進めていくことになりますので、慶応SFCの活用のみならず、多くの企業を誘致するための施策や職住近接といった形の住宅施策も同時並行的に採り扱っていくべきです。
かれこれ10年前、延伸計画が完成した暁には1日当たりの利用者数を約25,800人と試算しました。
これは小田急線の「六会日大前駅」とほぼ同程度の乗降客数となりますので、少なくともその程度の後背地を要していく必要があります。
この事業が着実に積み上げていけるよう、これからも様々な角度から見極めていきたいと思います。
元衆議院議員・元参議院議員:水戸まさし