外国人問題の本質を突く!Vo.3
~ 相互主義だけではなく国内における不公平感 ~
外国人留学生に対する我が国の取り組みは大丈夫?
今まで相互主義、つまり外国人の取り扱いにおいて、自国で認めていながら、相手国が日本人に対し認めてくれない制度について触れてきました。
しかしこれだけに留まらず、国内における日本人と外国人との比較に関する不平等感ついても触れていきたいと思います。
その端的な例として外国人留学生の受入れです。
確かに外国人留学生の受入れに対しては、我が国の人口減少や労働力不足への懸念と、国際競争力の強化やソフトパワー拡大のための投資という意味合いがあります。
日本に定着してくれることにより一定の労働力が維持出来たり、海外から高度人材を招き入れることにより研究や産業の国際化を促したり、また留学生の帰国後に日本との経済・学術・文化等で繋がるネットワーク的な役割を果たしてくれたり、様々なことが期待できるでしょう。
しかしこうした一連の受入れ政策が、果たしてどれだけ日本の国益に叶っているのでしょうか?

外国人留学生が日本人学生と比べて優遇されている点は・・・
日本政府は海外から優秀な人材を招聘するため、授業料の免除に加え、生活費(毎月の手当て)や渡航費など手厚く給付する制度を設けております。
その多くは返済不要です。
また、日本学生機構や自治体、大学によっては、独自の返済不要の給付型奨学金や、私費留学生向けの授業料減免措置を採っているところもあります。
そして留学生は一定の許可の下、週28時間までのアルバイトが可能です。
一方、日本人学生の場合、一昔前に比べて給付型の奨学金が増えてきておりますが、全体から見ると貸与型の比率が圧倒的に高い状況。
つまり日本人学生は借金しながら学んでいる構図が根深いのが現状です。
外国人留学生の約5割が授業料免除・減額を受けているのに対し、日本人学生は1割程度であるとも言われております。
また、留学生寮は安く、保証人不要および家具付きという点で恵まれています。
他方、日本人学生は一般賃貸を利用する場合が多く、家賃や初期費用の負担が大きいですし、外国人留学生に対して生活支援金やバス定期割引を提供する自治体もあるなど、日本人学生にはそれに該当する制度がないので不公平感を生んでおります。
さらに、就職支援やキャリアの面ですが、例えば国が進める「グローバル人材確保プロジェクト」なるものがあり、外国人留学生向けの就職フェアや特別インターン枠が存在します。
その一方で、日本人学生には同様な制度が少なく、このような「特別な橋渡し」は留学生向けに用意されるケースが多いとのことです。

我が国の国益に叶っているのか?
結論から言って、こうした外国人留学生への優遇策に対して、費用対効果が見えにくいのではないでしょうか。
国費で招聘した留学生の内、どれだけが日本で就業したり定着したりしているのか、また帰国後に日本と利益を共有し得るのか、はっきり追跡されているわけではありません。
外国人留学生への国費や大学の給付あるいは減免措置がとれだけ経済的なリターン(税収面、企業のグローバル化、研究の成果など)を生んでいるのか、定量的につかむべきでしょう。
これを放置し続けるならば、日本の技術力・産業力だけが海外に流出してしまい、外国人留学生に「良いとこ取り」されかねないという懸念は益々広がっていきます。
すでに外国人留学生は、昨年5月の段階で33万人を超えました。
今まで政府は受け入れ数を増やす政策を進めてきましたが、今後は量よりも質を問うべきです。
そして、今後は留学生の国内就職率を5割までに上げていくとしているものの、日本語教育や生活相談、住宅の斡旋等もセットで扱っていく必要があります。
国は、外国人留学生における卒業後1~5年間での国内就職率や在留継続率を公表すること。
あるいは留学生の帰国後、日本企業と母国企業間での共同研究や共同出資、貿易契約などの件数を数値化すること等で、その成果を把握していくべきでしょう。
外国人の参政権についての曖昧さ
ところで話は変わりますが、今までも何度か外国人参政権については国政課題でも論議されました。
しかしこのテーマは、在日外国人に対する選挙の投票権を認める是非に比重が置かれ、外国人の投票する権利そのものについては曖昧なままの状態です。
したがって既に、三鷹市や浜松市、新潟市など一部の自治体では、住民投票について外国人の投票を認める措置をとっておりますし、川崎市や豊中市などでは、外国人市民代表を公募して、市政協議会への参加を認めるております。
外国人に対する限定的な参加を認めるという、自治体の試みの観点から、地方自治を否定するものではありませんが、全国的なレベルでの相互主義のあり方や国益を踏まえた基準が不十分ではないでしょうか。
仮に国が自治体レベルで在住外国人の参加を認める際には、相手国の在外邦人に対する扱いや、外交的な視点から相互のバランスを考慮する枠組みにつき、制度として担保していくことは不可欠と思えます。

外国人の投票参加が火種になることに
これは実際にあった武蔵野市の事例。以前、武蔵野市が「18歳以上かつ3カ月以上住民基本台帳に登録している者」であれば、外国籍でも住民投票できるようにする条例案を提案したことがありました。
これが公開された途端、住民サイドからの反対署名やデモが表面化し、市議会は大荒れに荒れましたのは推して知るべしです。
それもそのはず、そもそも市側が市民に対して、その目的、制度設計、そして影響の度合い等についての説明が不十分だったため、将来的に外国人に選挙権まで認めてしまうことになるとの懸念が急速に拡大したからでした。
外国人への選挙投票権は認めないとしつつも、やはり国益や安全保障の観点から、自治体による安易な参政権の拡大には慎重さが求められると思われます。
また自治体側として、どの範囲まで外国人の参加を認めていくのかにつき、明確に住民サイドに周知していかなければなりません。
そして何より、国自体が自治体間のバラつきや混乱を抑制し、対象となる国の日本人に対する在外参政権に関する扱いを調査・報告するルールを設けながら、外交的なリスクを可視化すべきでしょう。

元衆議院・参議院議員:水戸 まさし