減税シリーズ④ ~国がやらなきゃ地方がやる!

税金問題

民間資金を求める際に不可欠な投資家の視点

税金不足を補うために民間からお金を集めるとなれば、やはり投資家の目線は気になるところです。
当然、投資家は自ら投じたことによるリターン(利益)を求めるものですので、投資する対象が魅力的なものでなければなりません。
また、単に金銭的な利益のみならず、社会的な評価や地域貢献という側面も同時に果たそうとする視点から、行政と民間との間で綿密な計画と戦略を立て、その将来性を推し量る必要性があります。

ここでは投資するスキームとして、
①REIT(リート)
②ソーシャルファンド
③SIBを取り上げてみます。
投資家にとって、
①は収益の安定性やリスク分散が図れることがメリットとなり
②は税制面での支援や社会的評価を得やすいメリットがあり
③は経験と実績が事業拡大に繋がるメリットがあると言われております。

そして各々の投資が、単なる資産運用商品向けにするものと捉えるだけでなく、社会的な課題解決に貢献する、いわゆる「インパクト」投資の性格を十分帯びているものという見方をすべきでしょう。

REIT(リート)の活用につき

REITは、簡単に言うと「不動産に投資する投資信託」のことです。
まず①投資家からお金を集めて、そのお金でビルや商業施設などの不動産を購入し運営します。
そして②賃料や売却益などから得られた利益を投資家に分配する、というスキームになります。
例えば、投資家から集めたお金によって、公共財が遊休化している場合にはそれを再利用したり、都市再開発の場合には街づくりと一体となった形で都市を再生したり、また、証券取引所の市場に上場したり、様々な使われ方がされます。

ただ、不動産価格の変動や、空き室リスクが、投資収益に影響を及ぼす危険性が出てきますし、あまり採算性だけを追求すると公共性が後退することも考えられます。

したがって、REITの制度を設計する際には行政サイドとして、
①信託する契約はじめ
②投資家からお金を集めた際に作る投資目的会社(SPC)との関係
③財産管理方法など

法的かつ財務的な高いスキルと経験が求められます。

ソーシャルファンドの活用につき

ソーシャルファンドとは、地域社会の課題(福祉、教育、子育て支援、環境保全、地域再生など)を解決することを目的として、民間資金を活用(調達して、それをうまく循環させる)する仕組みです。
まず、行政がNPOや金融機関と連携して、債権を発行して投資家や寄附者からお金を集めます。
そして、民間企業や市民団体、NPO等が現場での事業を行政に代わって実施します。

ソーシャルファンドは、上記の地域課題への直接的な投資を通じて、収益と社会的な意義の両立を目指すので、その成果が可視化できるメリットもあります。また、行政サイドからの制度的な補助や税制支援を設けることで、安定的に広く投資家を集めることもできます。
さらに法人・個人問わず、地域全体で連携することによって、課題を解決しようというネットワークが形成されやすいのも利点と言えましょう。

ただ、成果を数値的に示すことが難しいケースも多いので、スタートする前に、取り扱った事業の評価方法を厳密に設計することが重要です。
曖昧な評価基準では、投資家の信頼を失いかねません。
また、公と民の境界線を曖昧にしたままですと、その責任分担や透明性に関して、お互いの不信感の基となります。
そして、一度限りのキャンペーン型の資金に終わらせないためには、地域の持続的な課題解決に向けて、長期視点のファンド設計もしていかなければなりません。

SIBの活用につき

今注目されつつあるのが、このSIBです。
SIBとは行政が、直接的に公共サービスを実施するのではなく、民間の投資家からお金を集め、それを民間事業者(NPO等)に資金を提供しつつ社会サービスを委託し、一定の「社会的成果」が達成されたときに、初めて投資家に対して行政が成果報酬を支払うという仕組みです。

したがって行政サイドとしては、成果の達成に対する支出となりますので、失敗時の財政的なリスクは回避することが出来ます。
他方、事業当事者としても、行政との契約による一定の安心感の下で成果を出すことが出来れば、社会的信頼性が飛躍的に増大することになります。
ただ、例えば子育てや教育などの分野では、定量的な評価が難しい側面もあり、その目標値をどこに求めるか難しいです。
それと同時に、我が国では未だSIBに関する制度が未成熟であることや、あるいは成果未達成の場合に投資家が損失を被る可能性が出てくること等、法的な面からの整備が急がれます。

総合的に民間資金を活用するために

上記の3方式は、それぞれ異なる資金調達やサービス提供の手法ですが、共通項として言えるのは、「行政単位では困難な課題に対して、民間の資金・ノウハウ・イノベーションを活用する」という理念です。
いずれも相応のリスクとリターンを伴いますが、スタート時点での適切な制度設計とパートナーシップにより、地域の課題解決に大きく貢献しうると思われます。ましてや、民間が主導的に展開することにより多額の税金を投入しなくとも済みますし、公有地や老朽施設の運営を民間に任せることで、「資産が収益を生む」モデルを形成することも可能でしょう。

最後に1つの留意点として挙げなければならないのは、民間資金活用は「無償の財源」ではないことです。
将来的には、利用料や公的支出(成果連動型報酬)としての行政の負担が生じるため、一連の投資は、税の支払いを将来に先送りしているに過ぎない側面もあります。
特に、不調な運営やサービス不履行時のリスク分担が不明確な場合には、公的な補填が必要となって、むしろ税負担が増加する可能性も否定できません。

元衆議院・参議院議員:水戸 まさし

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