遺伝子組み換え食品は食糧難(自給率向上)の救世主?

食の問題

「遺伝子組み換え」食品は食糧難(自給率向上)の救世主になり得るのか・・・?

世界の急激な人口増加に相俟って、食糧難が問題視される時代となりました。
また気候変動により食料生産が大きく影響を受けることとなり、それを克服するため人工的に農作物を作り出そうという動きが高まっております。

いわゆる「遺伝子組み換え」および「ゲノム編集」と呼ばれるものですが、そもそも我が国でも米やジャガイモに見られるように、種を何世代にも亘って交配させて、気候や害虫に耐えられるような品種改良(突然変異)を試みてきました。
時代は進み、バイオテクノロジーの進展による「遺伝子組み換え」と「ゲノム編集」ですが、両者の決定的な違いは何かと言うと、自然界において発生する現象なのか否かというものです。

両者の決定的な違いは?

「ゲノム編集」では、品種改良で自然的に発生する突然変異を人工的に狙って起こすため、その生物で起こり得る性質の変化しか見られません。しかし一方、「遺伝子組み換え」は、別の生物から取り出した遺伝子をDNA配列に組み込む技術ですので、その生物がもともと持っていない遺伝子を組み込み、従来の種や突然変異では得られない形質を与えることができます。

国は明確にこの両者の違いを分けており、とりわけ「遺伝子組み換え」については、かなり厳しい安全基準を適用するようにしております。現時点で我が国内での「遺伝子組み換え」食品は全て輸入品ですが、それでも国内自給率がほぼゼロに近い、例えば飼料用トウモロコシ、大豆、ナタネ、綿などの輸入につき、その8割程度が当該食品です。

日本人が1年間に消費する「遺伝子組み換え」作物の量は、コメの年間生産量の2倍以上

言い換えれば、日本人が1年間に消費する「遺伝子組み換え」作物の量は、コメの年間生産量の2倍以上になっております。
米国は第1次トランプ政権下で、「遺伝子組み換え」食品の開発を推進するため、大幅な規制緩和をしました。
第2次政権がスタートした今日、さらに国家戦略として当該食品の大胆な生産体制を確立させて、我が国に対しても大幅な輸入促進を迫ってくるでしょう。

他方「ゲノム編集」ですが、前述したように外部の遺伝子を組み込まない手法なので、厚労省側として食品衛生法に基づく安全性審査を不要としました。また「遺伝子組み換え」食品のような表示義務を不要としたので、国に届け出れば(実際は、届け出前に安全性のデータの提出は求めている)、生産・流通・販売を可能としております。

既に、栄養価を高めたトマトはじめ、収穫量の多いイネや、筋肉量の多いマダイなどが開発されております。
ただ欧州においては、従来の「遺伝子組み換え」食品と「ゲノム編集」食品は同等であるとし、厳しい安全基準を義務付けているのを、我が国も認識しておく必要はあります。

人間や環境に対して安全であるのかについては、未だ明確な答えは出ておりません

いずれにしても、この両者が本当に私たち人間や環境に対して安全であるのかについては、未だ明確な答えは出ておりません。
アレルギーや癌を誘発する危険性が不明なこと、長期に亘って摂取した場合の慢性や毒性への評価がないこと等、いろいろな角度からの指摘はこれらが開発されて以来、ずっと論議されております。

少なくとも消費者が食べないという選択の余地は確保する必要があると思います。
したがって、「ゲノム編集」食品についても、やはりそれを表示するよう措置すべきではないでしょうか。
もちろんその前に、この両者の違いについても周知徹底を図り、国民や地域の理解を得ながら、後は自己の判断に任せるべきと思われます。何より長期にまたがっての知見を深めつつ、安全性と信頼性を獲得した上で、食料の安定的な生産と供給に繋げていくことが不可欠でしょう。

水戸まさし

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