2024年1月から認知症基本法がスタート
基本計画の策定に向け
ご案の通り、この1月から認知症基本法が施行されました。そしてこれを受け、各自治体レベルでの基本計画作りが始まります。目下、藤沢市も寒川町も、第9次の介護保険事業計画に合わせて認知症プランを策定中です。
年を追うごとに要介護認定率(65歳以上が要支援、要介護となる比率)が増加の一途をたどっておりますので、まずは健康な心身を維持していくことに配慮しつつけていく必要があります。(グラフ①参照)
また全国的に見て、60代後半で2.2%であった認知症発生率も、80代後半になると55.5%、90歳以上では70%近くに跳ね上がります。何より、これから認知症になるかも知れない、私たち自身が「自分ごと」として考え、共に支え合う社会を実現していかねばなりません。(グラフ②参照)
生活習慣と認知症との相関関係
そもそも認知症はどのようなプロセスで発生するのでしょう。例えばアルツハイマー病で亡くなった人の脳にはアミロイドβがびっしり溜まっているとのことは証明されています。仮に70歳で発症するとすれば、40代後半からその兆しは見え始めるとのこと。
既に過度のアルコールやタバコ、あるいは糖尿病などによる認知症リスクが、2倍以上高まることは知られていますが、認知症を引き寄せる習慣として、①歯の手入れをしない、②深夜までのテレビを見て夜更かしをする、③浴室や台所がカビだらけetc、も指摘されております。
今では認知症に対し、その生活習慣改善と栄養補給を中心とした治療プログラムの開発が進行中です。実際にアメリカでは、255人を対象に1年間の治療プログラムを実施したところ、その半数以上に認知機能が改善したことが報告されています。
今では認知症に対し、その生活習慣改善と栄養補給を中心とした治療プログラムの開発が進行中です。実際にアメリカでは、255人を対象に1年間の治療プログラムを実施したところ、その半数以上に認知機能が改善したことが報告されています。
ユマニチュードの普及に向け
聞きなれない言葉ですが、「ユマニチュード」とは人間らしさを取り戻すという意味を持つフランス語の造語です。そして、認知症の人に対してケアする場合のコミュニケーション技法を指す言葉でもあります。
とりわけケアを行う際には、「言葉によらない」メッセージが重要な役割を果たしますので、ケアする側が、「見る・話す・触れる・立つ」という4本の柱を上手に組み合わせながら、「あなたは私にとって大切な存在であること」を伝える技術が必要とされます。
既に一部の自治体では、このユマニチュードを普及させるため市民講座を開設し、医療・介護スタッフなどの専門職向けに、また家庭内向けに研修を進めております。先ずは現場における人材の育成が第一ですので、藤沢や寒川でも、多くの認知症サポーターを確保しながら、さらにユマニチュードの実践を進めていかねばなりません。
医療と介護の連携システムを!
国は2025年に向け認知症の高齢者でも、住み慣れた地域で医療や介護のサービスを受けながら生活が続けられる「地域包括ケアシステム」の構築を目指してきました。しかし実際には、病院から介護施設への移行手続きや情報のやり取りが複雑で、どう対応していいか分からないという声がここかしこから聞こえてきます。
したがってケアシステムでは、認知症患者に対して医師や看護師、薬剤師、管理栄養士や理学療法士らが協働して退院支援を進め、退院後も訪問看護師やケアマネジャー、ヘルパーらが支援をしながら安心して自宅で暮らせるよう、いつでも相談・連絡できる仕組みが必要となります。
またケア人材の不足も指摘されているので、医療機関と介護事業者が情報を共有しながら、一貫したケアプランを作成することによって、病気の早期発見はじめ、治療や予防介護にも繋げていくべきです。そして同時に不必要な医療サービスは抑えていくことも求められます。
認知症のキーワードは法律でも謳っている通り「共生社会」です。認知症になっても暮らしやすい地域作りは、誰もが当事者感覚で進めていくべき課題ではないでしょうか。